じわじわっと絶望がやってくる「肝臓がん」の怖さ

沈黙の臓器三兄弟の長男・肝臓。腎臓、膵臓とならんで、病気になっても自覚症状が現れにくい臓器の代表といわれています。ただ、がんに侵された場合の怖さでは、発見しにくい上に進行が早く、みつかった時にはできることがほとんどないとの理由から、  膵臓が「がんの王様」ということになっています。

でも、肝臓がんの質の悪さは、膵臓がんとは別の意味で最恐クラスです。

その理由は、とにかく再発が多いこと。

切除手術を受けられる条件は3つあって、1つは「肝機能が肝障害度AまたはB(肝機能がまあまあ保たれている状態)」であること。ほとんどの肝臓がん患者さんは、肝臓の機能が低下しているため、肝臓をがんごと切除した残りの部分の機能が不十分な場合には、手術を受けることができません。

条件の2つめは「 肝臓にあるがんが3個以内」であること。4個以上でも、まとめて取り切れる位置にがんがあるのなら、手術できないことはありませんが、がんの個数が多いほど、切除範囲も大きくなるため、基本、手術できるのは3個以内になっています。

条件の3つめは、「 がんの大きさが3cmを超える」こと。「3cm以内」の場合には、切除手術よりもからだに対する負担が小さい「ラジオ波焼灼療法(RFA)」が検討されます。RFAは原則として肝臓がんの大きさが3cm以内の人が対象になります。一度に焼灼できる範囲が3cm程度になるので確実にがんを焼き切るには3cm以下の方が適していると考えられるからです。数も原則として3個以下が治療時間や安全性の面から適当な目安とされています。

これら3つの条件を満たして切除手術を受けられたとしても、術後1年以内には25~30%、5年以内には70~80%が再発してしまうのが、肝臓がんのやっかいなところです。肝臓がんはB型肝炎やC型肝炎、アルコールや脂肪肝など、さまざまな原因によって発症するため、切除手術でがんを取り除いたとしても、それらの原因を根絶するのは難しいことに加え、同じ肝臓内での転移が起こりやすいので、肝臓内の太い血管を移動して、肝臓のあちこちにがん細胞の種が転移して、期間を開けて次々と、がんが芽吹いてしまうのです。

そして、再発した場合には、肝機能は衰え、がんの数も3個以内では済まないケースが多いので、手術もRFAもできず、残るは、標準治療ではあるものの、治療成績はイマイチ(2年生存率は75%、5年生存率25~50%)の「肝動脈化学塞栓療法」か、延命としての「薬物療法」になります。

つまり、膵臓がんが、発見即大ピンチのがんだとしたら、肝臓がんは、最初のうちはやれることがあるものの、半年~数年で行き詰まってしまうがんと言えるでしょう。

医師も患者も、早々に諦めて、運命を受け入れてしまっているのが、日本の肝臓がん患者の現状なのです。

でも、諦めるのはまだ早いです。

「門脈動脈同時塞栓療法(もんみゃくどうみゃくどうじそくせんりょうほう)」と「肝動注化学療法(かんどうちゅうかがくりょうほう)」--従来の治療法を極め、進化させたこの2つの治療法があれば、諦めなくていいし、治癒することも不可能ではありません。

しかもこの2つ、保険診療で受けることができる標準治療なのです。

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医療ジャーナリスト ひろみんの仕事部屋

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