「肝動注化学療法」は、肝臓の動脈から脚の付け根までカテーテルを留置して、抗がん剤を直接、肝臓に投与する治療法です。
がんの数が2~3個と限られているような場合は、門脈動脈同時塞栓療法で対処できますが、肝臓がんは肝臓の中で転移を起こし、どんどん増えていく特性があるため、ときには肝臓内に100個以上ものがんがあったりします。
あるいは、肝臓内に10~20cmと広範囲に広がっている場合。
さらに抗がん剤が効かなくなった場合や、副作用などで抗がん剤治療が行えなくなった場合で、肝臓だけに病変がある・・・そのような時にも、肝動注化学療法を試みる価値が高いそうです。
「繰り返し何度も、薬を患部に届けたい場面というのがあるんです。
しかし動脈は、カテーテルの針を刺すたびに出血するので、何回も繰り返すなんて、そんなリスクのあることはできません」
そこで行われるのがこの肝動注化学療法です。肝臓から足の付け根までカテーテルを通し、最後に、足の付け根部分に新たに局所麻酔を行って、接続口となるポートを皮下に埋め込みます(2cm程度の大きさ)。そうすれば、必要な時にポートに針を刺せばいつでも、カテーテルを通って点滴をするかのようにがんが存在する肝臓の動脈に直接抗がん剤を投与する事が出来るようになるのです。
安全性も効果も高い治療法ですが、一つ問題なのは、高度な技術が必要なこと。
「肝臓の動脈は一本道ではありません。途中に胃や十二指腸、膵臓等の動脈があり、そこに薬が流れてしまうと胃潰瘍が起きたり、十二指腸の前のところで膵炎が起きたり、トラブルになります。
回避するには、肝臓だけに薬が流れるようにしないといけません。
そのためには脳動脈瘤に詰めて瘤を枯らすプラチナコイルを使って、それぞれの臓器に行く血管を通行止めにして、肝臓だけに通じる一本道を作る必要があります。そんなことしたら、胃や腸に血液が行かなくなるんじゃないかと心配になりますよね。ところが人の体はよくできていて、反対側からちゃんと血流は通ります。こういう形で肝臓だけに安全に薬が流せるルートを作り上げるんです」(岩本医師)
また、肝臓の形状も、じつは人それぞれ。患者さんごとに上手くカテーテルを通すには、やはり高度なテクニックが必要だと言います。
医療ジャーナリスト ひろみんの仕事部屋
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